読売新聞編集委員 伊藤俊行
2015年11月04日 05時20分
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11月1日にソウルで行われた3年半ぶりの日中韓首脳会談と、翌2日の安倍晋三首相と 朴槿恵パク・クネ大統領の初めての日韓首脳会談により、東アジアを安定させるうえで欠かせないパズルの1ピースが、ようやくはまった。ここまでの道のりからは、安倍首相の一貫した外交戦略が浮かび上がってくる一方、誤算や副作用もあった。
一貫した「日中優先」
日中韓共同記者発表に臨む安倍首相、朴大統領、李首相(左から)
第2次、第3次安倍政権の約3年の外交政策で一貫していたことの一つは、「韓国よりも中国優先」の取り組みだ。
日中、日韓どちらの関係も、自民党が民主党から政権を奪還した2012年12月の時点で、既に冷え込んでいた。日中関係は同年9月の沖縄県尖閣諸島の国有化、日韓関係は同年8月の李明博大統領(当時)の島根県・竹島への上陸がきっかけだった。翌年、中国は習近平シー・ジンピン政権に、韓国は朴槿恵政権に交代し、いずれも対日強硬姿勢を強めた。また、朴大統領は韓国大統領として初めて、日本よりも先に中国を訪問するなど、韓中関係を韓日関係よりも優先する姿勢を鮮明にしていた。
こうした状況のもと、日本政府では、中国、韓国との外交の進め方をめぐり、二つの考え方が対立した。
一つは、外務省などを中心に強かった「日韓関係の改善を優先すべきだ」という声だった。
日韓優先派は、日中関係の悪化の主要因が尖閣諸島の領有権を中国が主張していることにある以上、首脳会談の実現はハードルが高いと考えた。また、安倍首相が自由、民主主義、法の支配といった価値観を共有する国々との関係を深めていく「価値観外交」に取り組んでいたことを踏まえ、「政治体制の異なる中国ではなく、同じ価値観を持つ韓国との関係改善を優先するのが筋だ」とも説いた。
もっとも、日韓優先派を背後で突き動かしていたのは、安倍首相の価値観外交への共鳴というよりも、米国のバラク・オバマ政権の意向だった。
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日中韓で新たなリーダーが誕生したのと時を同じくして、北朝鮮では金正日総書記が死去し、金正恩第1書記がトップとなり、朝鮮半島情勢に不透明感が漂っていた。朝鮮半島有事が起きた場合、米国は同盟国である韓国、日本と連携して対処することになるが、日韓関係が険悪では、日米韓の協力体制に支障が生じるとして、国防総省を中心に米政府内で懸念が強まった。このため、米政府はことあるごとに、日本政府に対し、「日韓関係の改善」を促し、同時に、韓国政府に対しても「韓日関係の改善」を求めた。外務省に日韓優先派が多かったのも、米国からの「プレッシャー」という要素が大きかった。
これに対し、安倍首相がより多くのエネルギーを割いたのは、中国との関係改善だった。狙ったのは、「中国とも韓国とも、一挙に関係改善に持ち込む一石二鳥」(政府高官)だ。
朴大統領が日韓関係の改善の「前提」に慰安婦問題を掲げる以上、この問題で譲歩する考えのない安倍首相にとってのハードルは高い。むしろ、尖閣諸島をめぐる対立はあるものの、日中関係の悪化が中国経済に与えている打撃の大きさを考えれば、中国が日本に歩み寄ってくる余地の方が大きいと見た。北朝鮮問題に関しても、中国の北朝鮮に対する影響力をテコにできるという判断もあった。
何よりも、日中の首脳が先に握手すれば、中国への傾斜を強めている朴大統領も慌てて追随してくるという計算が働いた。
官邸主導の外交を展開する安倍政権ゆえ、軍配は中国優先派にあがった。そして、この政治主導の外交戦略は、実利という点では成果があったものの、深刻な副作用ももたらした。それは何か。無修正 Jav
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